渡航体験記vol.77(立命館大学3年Yさん)

■大学名:立命館大学

■学年:3年

■渡航時期:Q1

■渡航期間:3/28-6/30

■目次

○はじめに

○SHIPに応募した経緯

○SHIPで学び得たこと

○今後に向けて

○おわりに

■はじめに

 はじめまして!立命館大学3回生Yです。突然ですが、みなさんは最近の生活の中で、少しでも小さなイライラを感じる瞬間がありましたか?

この「イライラ」という反応は、多くの人が日常生活の中で向き合うごくごく普通な反応である思います。例えば、電車が遅延していたり、行ったレストランで待たされたり、エレベーターがちょうど行ってしまったり、挙げれば切りがないはずです。

この「イライラ」という感情はできれば感じたくないですよね?僕はインドという国への渡航・インターンシップを通してこの感情と上手に付き合う方法、マインドを手に入れることができました。

「わざわざインドにまで行って得たものが、イライラと付き合う方法だったの?」と思うかもしれませんが、僕の中では得ることができた他の数々の学びよりも、本質的で重要な立ち位置であったと感じています。

今回この渡航体験記を通して、僕の中でどんな変化があったのか、みなさんにお伝えできたらと思います。少しでもSHIPへの参加を考えている方へのメッセージとなれば幸いです。

仲良くなったインド人学生と学内のカフェで撮った写真です。政治の話に花が咲いて話していました。さすがIIT!!

■SHIPに応募した経緯

 まず、そもそもなぜ僕がSHIPに参加しようと思ったか、経緯をお伝えできればと思います。

みなさんはアップルの元CEO、スティーブ・ジョブスが2005年のスタンフォード大学卒業式で行なった伝説のスピーチを知っていますか?(見てない方がいたら、某動画投稿サイトに上がっているのでぜひ見てください!)実は僕は、このたった15分間の短いスピーチを見た時、気づけば手先がプルプルと震えるくらい感動していました。彼の生き方のコンセプトに共感できたのだと思います。

そのスピーチを聞いた日から、僕はジョブスを「人生のみちしるべ」として掲げたいと思いました。そんな僕の指標であるジョブスは、僕と同じ21歳の頃、インドを放浪していたそうなのです。彼にとって、この放浪が、彼自身の生き方を見つめるきっかけとなり、大人になってからも、困ったら立ち返る場所として思い出していたそうです。

僕はスティーブ・ジョブスの一人のファンとして、彼の価値観を大きく変え、突き動かすきっかけとなったインドという環境に興味を持ちました。インドという国に何があるのか、なぜ『インド』なのか自分の目で確かめたく思い、SHIPの説明会に参加し渡航を決めました。

自分で持参していたスケボーを通してできた友達と写真撮影。(もっと自分も練習しておけばよかったな、、)

■SHIPで学び得たこと

 さあ、それでは長い前置きを置いておいて【はじめに】で少し触れたイライラと上手に付き合う方法を得るまで自分がどんな経験をしたのかをお伝えしようと思います。

【何事もうまくいかない国、インド。】

 まず、インドという国に来て衝撃だったのは、自分の計画通りに何も進まないということでした。

これは、インドの土を踏む前、空港の時点から実はウェルカム洗礼を受けていました。その日はインド初日で、配属地のインドール空港へ行くフライトに乗りこみ離陸を待っている時でした。やっとアナウンスが聞こえて、「そろそろ離陸かな?」と思っていたら、離陸する気配が全くなく、「おかしいな。いつになったら飛ぶのだろう」と思うこと約2時間。もう一度、アナウンスが入り、「やっとか!」と思ったら、その飛行機からは降ろされる指示が出たらしく、違う飛行機に乗せられました。そしてその飛行機の席に着いてベルトを締め、「良かった、やっとだ」と安堵していると、飛ばずにそのままで待機している状態がまた続きました。そしてまた飛行機を降ろされ、最初2時間座っていた機体へと案内され予定より3時間半遅れての離陸。この時は日本からの長時間フライトの疲れ、空港に向かうための早起きが重なり、終始イライラしていたのを今でも鮮明に覚えています。

また、知るカフェで実際に業務を始めるとさらに多くのイライラが積もり始めました。眠い目をこすって出勤し、蛇口をひねると断水のため、水が一滴も出てこなかったり、大学設備のWi-Fiが遅くて全く使えない日があり、レポート提出や告知の投稿が思っているように進まず、仕事にかかる時間が2倍にも3倍にもなってしまったことがありました。また突然の雨による2時間の停電、浸水で、業務をやむなく停止せざるを得なくなるなどのイレギュラー事項が頻繁に起こりました。

また食事や生活環境が変わり、精神的・肉体的に疲弊を感じていた上、このような予想外のハプニングが起きると、イライラが止まりませんでした。

【怒っても何も有益なものは生まれない】

 こうして、食事や生活環境がまるっきり変わった上、毎日の生活は何かしらのハプニングがつきものでした。こうした環境を今まで体験してこなかったため、絶えず心の中は乱れていました。乱れた結果、業務や日常生活に支障をきたす結果となってしまいました。

まず実際にイライラして僕が渡航中にしてしまったことを3つ挙げたいと思います。

1. 人間関係の悪化

 イライラが自分の中を占めてしまっている時、ほんの些細なことに対しても怒りを感じ、自分の態度が悪くなってしまいました。周りにも自分のイライラは伝染するもので、店舗内スタッフだけじゃなくて、お客さんに対しても良くない影響を与えてしまうということに気づきました。自分のこういった態度が店舗のメンバーの士気を下げてしまうことだって考えられるし、自分が気付かないうちに店舗に無駄な重荷を増やしてしまっていました。

2. 判断力の低下

 イライラを感じながら仕事をすると、判断力が著しく低下していました。正常時にできる判断と比べ物にならないです。これは後に振り返った時に改めて感じることができたのですが、イライラの感情はある時は自分の視野が狭くなり、全てが自分本位になってしまいました。仕事ということを忘れ、自分本位になってしまっていました。仕事中なのにも関わらず、自分本位になることはあってはいけないことなのに、その判断を自分に下すこともできなくなっている時がありました。判断力が低下すると仕事もはかどらないし余計に疲れてしまいました。

3. いつもの2倍疲れる  ×  疲れたら余計イライラする

 さらに、極め付けは疲労感の倍増です。イライラして周りの人間関係がうまくいかないと、そこに対して余計にイライラして疲れてしまいます。さらには判断力も低下してしまうため、もっと効率的に動けたことに対しても正常な判断が下せずに余計に時間がかかって、余計に疲れてしまう。さらに余計に疲れると余計にイライラしやすくなります。毎日毎日が負の連鎖の連続でした。

このようにイライラという感情は、全く良いことがありません。でも僕はその弊害に気づかずに感情のコントロールができず、心も体も消耗していってしまいました。

 当時の毎日起こる些細なことに対してイライラを感じてしまうという状況が全く健全なものでないことは明らかでした。しかし、感情に支配され、何もプラスの結果を生んでいないとう事実に気づくまでにかなりの時間を要してしまいました。しかし幸いにもインドという厳しい環境下に置かれたことで気づくきっかけを得ることができました。特にその気付きの中で僕が一番に感じたものがありました。その気付きというのは、起こった事象には正も負もなく、自分というフィルターを通す時初めてそこに正負の感情が生まれるということでした。

【どんな状況にも幸せを見つける】

 例えば、カフェ内でコーヒーをこぼしてしまったお客様がいたとします。もちろん机の上もビショビショで拭かなきゃいけないし、余計な仕事が一つ増えてしまう状況です。しかし、この溢れたコーヒーという事実については、プラスもマイナスもなく、ただの事象です。だから、この溢れたコーヒーという事実をどう捉えるかによって、自分の物の見方が変わるということが分かりました。コーヒーをこぼしてくれたおかげで、机の上をきれいにするきっかけになった!と思って、自分というフィルターをプラスに持っていくことでこのイライラと上手に付き合っていくことができるということを知りました。

 どんなことにも自分というプラスのフィルターを通すことを意識することで、イライラという感情に自分を支配されないようにコントローツができるようになりました。また、そのおかげでイライラによって生まれてしまう負のエネルギーの連鎖も同時に断つことができるようになりました。無駄なエネルギーの消費を抑え、起こる事象のすべてを幸福であると感じることでそこにさらに新しい活力を生むことができるというサイクルも自然と作ることができました。全ての物事をプラスに捉えるようにできてから、今までに起こってしまったネガティブな事象を全て消すことができ、さらには活力に溢れる生活を送ることができるようになりました。

 過酷な環境下だからこそ、怒りという感情と向き合うきっかけとなり、精神的に成長することができたと感じています。

インドで迎えた21歳の誕生日。道端からケーキを持ったスタッフが顔めがけて襲ってきました。とっさに避けてしまい右肩に命中。自分から当たりに行けばよかった。。

■今後に向けて

 またこの“怒り”という感情について革命の父と呼ばれるインドの偉人、ガンジーも重きをおいてコントロールに勤しんでいたそうです。ガンジーは古代インドの古典『バガヴァット・ギーター』にある「怒りから迷妄が生れ、迷妄から判断力の混乱が起こる」という言葉と出会い、それ以来怒りが湧き上がるたびに厳しい断食の試練を自分に課し心の平安を保つよう努力を続けたようです。

これからはさらにこの怒りという感情との付き合い方をマスターし、他の人の痛みを分かってあげられるような寛大な人間を目指して、本質的に人のためになるということを理解できる社会人を目指していきたいと考えています。

一番仲良くなった学生と夢を語りあった!みんな大きなビジョンを描いててかっこよかった。

休日に市内のおいしい(インドだけど)イタリアンのレストランに!!普段はカレーしか食べられないから新鮮で体に染みました。

■おわりに

SHIPがどんなインターンシップなのかは、他の渡航者が体験記にたくさん書いてくれていると思います。しかし、その中であえて僕が言いたいことは、SHIPとは、特定の決まったスキルを磨きに行くインターンシップではないということです。人にはそれぞれの課題、学びたいもの、学ばなければいけないことがあります。SHIPは「これが学べる!」という枠組みが決まっていません。つまり成長の幅は自由自在であるということです。僕のように多くを学んだ上で、怒りのコントロールが結局一番大きな収穫だったと感じる人もいるだろうし、将来に必要なスキルを磨きにSHIPに参加し達成して帰る人もいます。100人いたら100通りの学びがあります。大学生活の貴重な時間を使って渡航に参加する意味は大いにあります。迷った時、困った時に立ち返る基盤をくれるインドに、100通りの学びがあるSHIP、ぜひ渡航後の自分を想像して欲しいです。

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